勉強熱心で努力家、アイデアマンでもある。その根底には「お客様に喜んでもらえる商売がしたい」という気持ちが一貫している。カウンターでお客といろんな話をする。その中で、ふとひらめくものがある。それを形にできないかをじっくり考え、熟成させて実行に移す。政富寿司の他店にないユニークな試みが、お客に受けている。そのいくつかをご紹介。
8年前、テーブル席に業界に先駆けて電磁調理器を導入した。その後ただの調理器では面白くないと「船上紙鍋」を開発。これは舟盛りの船の中央に竹かごの紙鍋をセットし、テーブルの電磁調理器で調理する。船の前後にはたっぷりと野菜や魚介類を乗せ、豪華な感じを演出したところお客に大受け。その後「船上紙鍋」を特許申請し、5年後やっと認可された。紙鍋のダシも同店だけの秘伝。コンブもカツオも使わないカエシは、15倍に薄めて供するとのこと。
ご主人の竹林さんは、昭和19年生まれの57歳。石切の中学を卒業し3日目から大阪・天満宮近くの老舗すし店に奉公、きつい修行に耐えて昭和48年12月、29歳の時、生まれ育った石切で「政富寿司」を開店した。「手を抜かず、きっちりした仕事」が竹林さんの信条。既製品は並の巻き芯だけ、幕の内や会席の副材料からあしらいまで、すべて店で作る。その心意気がお客に伝わり、口コミでかなり遠方からの注文もある。とにかく研究熱心で、毎年インテックス大阪で開かれる「食博」に出かけ、展示企業の商品を検討し、すし店で便利に使えるように提案もする。今は一般的となったライスロボ、電磁調理器、食品冷却器など、竹林さんが提案し改善された厨房機器は少なくない。数年前には調理技術・技能検定にも合格した。同店の調理場は店の3倍はある。大きないけすには、タイ・フグ・エビ・アワビなど。大型冷蔵庫が5台も並ぶ。人手は奥さん、娘さんを入れて9人、腕の良い若い従業員が店の自慢。
売上の減少はいずこも同じで「一時の半分ですわ」と笑う。しかし値段は崩さない。ちなみに、にぎり盛り合わせは並1000円から特上5000円、幕の内・会席は3000円から10000円。鍋はうどんすき4500円、寄せ鍋・かにちり・しゃぶしゃぶ5000円など。フグ・クエ・アンコウもできる。 |